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おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の四十二 両神山八丁尾根(リベンジ) 2016/5/18

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前年(2015)の暮れに未踏で終わった両神山八丁尾根コース。

ガスに煙ったナイフリッジを前に撤退を決めたあの時から、おれの心の奥にそれは硬いしこりとなってわだかまっていた。

悪天候だけが撤退の理由であればさほどこだわることではないのだろうが、あの時おれの中にあった恐怖心、「ビビって逃げたのだ」という負い目がおれの心の奥で疼き続けていたのである。

 

その雪辱を晴らすべく向かった2度面のチャレンジでは、アプローチの林道がまさかの通行止めで、ここよりもっと怖い山に予備知識無しで行く羽目になり見事返り討ち… という惨憺たる状況におれは陥ったまま、冬が過ぎまた春がやってきた。。

この雪辱を果たさずして大手を振って山を歩くわけにはいくまい。。

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そんな次第で林道の冬季通行止が開けた頃合いを見計らって、今回は待ちに待ったリベンジ山行というわけだ。

ちなみに「リベンジ」という言葉は本来の英語としては「復讐」であったり「報復」という意味を含んでおり、なんとなく日本で使われる「雪辱(戦)」といった意味あいの言葉ではなく「恨みを晴らす」というニュアンスのネガティブな感じの言葉のようである。

 

山に復讐もあったもんじゃないが、散々やられて痛い目をみたこちらとしてはちょっとだけ「恨みを晴らす」といったネガティブな感情も孕みつつ、それをモチベーションに変えて挑んでやろうとそんな感じの心境ということで。。

ちっぽけな人間一匹が恨みをぶつけたところで、山という圧倒的な存在は微動だにしないだろうし、登山者がどんな気持ちで挑もうと、詰まるところ登山における闘いというのは己の影と戦うシャドーボクシングのようなものなのだ。

 

…とまあ与太話はそこそこに、本題に入りたいと思う。

 

朝は5時前に出発。快調に飛ばして6時過ぎには秩父エリアに。天気は快晴の予報だ。

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【6:40】小鹿野町の路上。皆野から秩父市を通り抜けて国道299に向かって走っていくと、周囲を囲んでいた山々の間から忽然と両神山が姿を表す。深田久弥曰くの「両側がぶっ切れた」屏風の如き山容。今度こそあの鋸歯を渡りきってやるぜ、と気持ちが引き締まる。

 

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国道はやがて一車線の細い道となり、坂本の集落を抜けるとその先は山越えコース。山肌に沿って大きく回りながら標高を上げていく。志賀坂トンネル手前で林道に入るとさらに危なっかしい感じになってきて、その途中から山頂方面を見上げると、尖ったピークが連なる異様な風体の山並みが目につく。

とりあえず写真に撮って後で調べてみると、どうやら尖りピークの合間を抉ったような鞍部が八丁峠のようだ。とすれば峠の左のピークが行蔵坊でその次か西岳といったところだろう。

 

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【7:40 】八丁トンネル入り口の右手にある登山口に到着。先客が5、6台。平日でもそれなりに誰かしら登っている両神山だ。看板には「小鹿野観光八景・二子山と八丁峠」とある。この二つの山におれは借りを返していかねばならんというわけだ。

 

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清潔なバイオトイレ投げ銭箱でもあれば100円くらい入れるのに。無かったと思う。諸々準備を済ませて出発。【8:05】

 

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最初からいきなりの急登。まずは一気に登って八丁峠を目指す。

 

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八丁トンネル登山口から八丁峠、行蔵坊、西岳、東岳、前東岳と超えて両神山の山頂となる剣ヶ峰へ。距離にして片道3km程の間に鎖場が28箇所、標高は登山口が1220mで山頂が1723mでその差は503mだが、登って降りての連続のため累積標高差は1124m。今回はピストンなので全部の鎖場を登り降りで使うことになる。

 

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いきなりの鎖場を超えて八丁峠まで急登と狭い山腹のトラバースを繰り返す。花粉の季節も過ぎ去り爽やかな新緑を憂いなく満喫する。

 

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【8:50】八丁峠に到着。ここは休む間もなく通過。

 

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峠を超えてちょと下ったところ。山頂まですぐのように思えるこの距離が、長い。

 

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まずは行蔵坊へ向けて、本格的な鎖場の始まり。見上げて撮るのでハレーションが。。

光に向けて這い上がる虫になった気分だ。

 

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長い鎖。画像で見るより実際は急な印象だが、見た目ほど難しくはない鎖場が続く。

 

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あの鎖を辿ってあの岩を超え、登った分だけすぐに降りる。。

 

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岩の上に立って周囲を見渡す。名も無き山々が美しい(まあ何らか名前はあるのだろうが)。鎖場の険しさ(楽しさ)で知られた八丁尾根だが、遮る物のないとんがりピークからの眺望の素晴らしさもかなりのもの。

 

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山深い奥秩父方面。どこまでも続く山並み。

 

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【9:45】行蔵峠着。地図などには「行蔵坊」の表記だが、山頂標(?)には「行蔵峠」と。眺望よし。

 

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登ったら下ってまた登る。行く手には依然として太陽が待ち構える。

 

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八丁峠から700m進んだようだ。所要時間は1時間弱。

 

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西岳へ続く長い鎖。

 

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【10:00】西岳登頂。

 

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山頂からの眺め。行蔵坊を振り返る。

 

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さらに長い鎖を降って登る。帰りは逆から降って登る。

 

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龍頭神社奥社手前の風穴。難ルートのある尾ノ内沢から冷たい風が吹き上がってくる。

しばらく暗いキレットを眺めながら体を冷やす。

 

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【10:25】龍頭神社奥社に到着。去年の暮れに登頂を断念して引き返した場所だ。

その時のここの様子はこんな感じだった。

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そしてその先は。。

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この不気味さ。

だが天気が良いと全然違う。

 

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うん。これなら大丈夫。左右が切れ落ちたナイフリッジだが、慎重に行けば問題なしだ。

落っこちたらアウトだが、最悪四つ這いでも何でも超えればいいのだ。

この時のおれにとって、このナイフリッジは未踏の世界への架け橋なのだった。

 

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行く手に立ちふさがる急斜面の巨大な岩塊。鎖を使って(なるべく使わず)よじ登る。

 

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鎖の先にはまた鎖。遠くからは壁のように見えたが、取り付いてしまえばあとは目の前の一つ一つの岩を順番に乗り越えていくだけだ。

 

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【11:10】東岳山頂のあたり。広めに開けていて腰を下しやすい感じの岩もある。しばしの休憩にちょうど良い。

 

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ここからは秩父市方面への眺望が良い。真ん中あたりの突起が武甲山。新緑につい見とれてしまう。

 

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東岳から先はヤセ尾根の稜線が続く。派手な鎖場はほぼ終わった感じ。

 

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東岳から山頂までだと地図上の距離としてはまだ3分の1くらい残っている感じだが、コースタイムは40分程度だ。

 

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小走りで駆け抜けられるような快適な道が続く。

 

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最後に長い鎖が。なかなか急だか一気に行く。

 

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開けた展望の向こうに富士山が。

それを横目に登り詰めれば…

 

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【11:50】山頂に到着。山頂には別ルートで登ってきた人もいてなかなの賑わいだ。入れ替わり立ち代わりでおれがいた小一時間のうちに述べ20人ぐらいは見かけた感じだ。

 

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カップラーメンを食べ、コーヒーを飲む。周囲にいた人に適当に声を掛け、適当な話をする。この時は富山の方から来ていたおじさんと少し話した。富山なら登る山などいくらでもあるのでは?と問うと「まだ雪で登れんのよ」とのことだった。

 

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確かに遠くにうっすら見える北アルプスはまだ雪を冠っているようだ。

 

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ここの山頂は本当に景色が良くて、晴れているとついつい見とれて長居してしまう。

あまり遅くならないように適当なところで見切りをつけて撤収だ。

 

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13:00ちょい前に下山開始。来た道をひたすら戻る。

 

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東岳あたりから大キギ。こんなバリエーションルートにもいつかいけるようになりたいものだが今は見るだけ。奥には秩父市街と武甲山

 

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東岳山頂を少し過ぎたあたり、この眺めが印象深い。延々と続く奥秩父の山々と、一番奥が八ヶ岳連邦。

 

前回来た時には霧の向こうで行く手を阻む壁のように見えた東岳。降りてきた道を振り返ってみた。人の姿が米粒のように見える。あそこを超えてきたのかと、なんとなく感慨が湧く。

  

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【14:30】帰り道最後のピークとなる行蔵坊。北の方を見るとあまり目立たぬ感じで二子山の岩モスラ(今命名)が見えた。こうしてみるとそんなに大した山にも見えないが、今回なんとかリベンジを果たせそうなこの八丁尾根よりもさらに手強い相手だ。

しかしこの岩モスラにもいずれ借りを返しに行かねばならない。

ひとまず今日のところは「大したものでもなさそうだな」と見下ろしてやって、いずれ再び相まみえるその日までそういうことにしておくことにした。

 

鎖場地帯を渡り切って、ひとまずの安堵に浸りつつやがて道は八丁峠にさしかかる。

 

峠の尾根を越えようとしたその時、正面から吹き抜けていく風を感じた。

全身を撫でていく風は今まで感じたことがないような心地よいものだった。

目を閉じて峠に立ち、しばし吹かれるのに身を任せる。

全身の火照りを優しく冷まし、同時に全身にこびりついたわだかまりや心のうちのしこりを風が心地よく洗い清めていくような、心も体も癒されるような気分だ。。

 

<イメージ図>

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金色の草原に立ち癒されていくナウシカのような気分で、おっさんが一人、風に洗い清められていく。。おっさんの心の奥にだって純真無垢な少年が棲んでいたりもするわけで、ぜひそういう部分を汲んでいただきたい。

 

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息を深く吸って目を開ける。あとは駐車場まで、来た道を戻るのみだ。

だがこの先も気を抜いてはいけない。無事に下山するまで、いや、家族の元に無事に帰り着くまでが登山というものだ。そう自分に言い聞かせて気を引き締める。

【15:45】無事、八丁トンネル駐車場に到着だ。

 

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帰り道は林道を、来た方向とは逆、八丁トンネルを抜けて上落合橋、中津峡方面に向かってみた。

どちらかというとこちらのほうが道幅も広く、整備も行き届いており走りやすい印象を受けた。途中のニッチツ鉱山建物や廃屋の風情などもいい感じだ。少し回り道ではあるが、こっちからなら冬場もある程度通れるといった話も聞いたことがある。

 

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ニッチツ鉱山を外界と隔てる雁掛トンネル。素掘りで照明などない長いトンネルで、車で通っても不気味。歩いて通るとなるとかなり勇気が求められそうだ。

 

と、そんな感じで。

前回あれ程恐ろしく感じた両神山の岩場も、実際に踏破してみればある面では「こんなものか」と思える部分もあった。もちろん体力的にはかなり消耗したし行動時間もそれなりに要したわけで、おれのレベルではかなりハードな部類の山行だったし、経験の少ない人に「簡単だよ」などと調子こいて勧めるつもりもない。

しかしコースは分かりやすくて道迷いなどはないだろうし、鎖場は全体にホールドも豊富なので鎖にしがみついて登らなければならないといった場所はほとんど無い。それにしっかりした鎖がついているので切り立った崖の斜面にいて高度感に恐怖を覚える場面は無かった。

 

おれとしては鎖場の楽しさもさることながら、各ピークや途中の眺望スポットからの眺めの素晴らしさのほうが印象に残っている。新緑の時期に行くには最高に気分の良い山なので、そろそろまた天気の良い日を見計らって出かけて行ってみたいと思う。

 

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◼︎両神山は滑落事故や遭難も多い山。地図は必携。

山と高原地図 雲取山・両神山 2017 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 雲取山・両神山 2017 (登山地図 | マップル)

 

 

◼︎埼玉・小鹿野の山でやられた記録

 

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