おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の十七 両神山・日向大谷コース 2015/4/2

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埼玉県の秩父市よりも少し奥、小鹿野町に鎮座する両神山。山頂部に鋸歯型の尾根を持つ険しい山容が特徴的な山で、日本百名山の一つに数えられている。

埼玉県の山では他にも雲取山甲武信岳百名山とされているが、いずれも他県との境に位置するものであり(雲取山は東京都、甲武信岳は山梨・長野との県境となる)、純粋に埼玉県内の百名山と言えるのは両神山だけである。

 

と、そこに強いこだわりがあるわけでもないのだが…

山登りを始めてしばらくした頃から、なんとなく最初の目標として、おれは両神山に狙いを定めていた。いくつか山を登り、他のいろいろな山のことを調べているうちに、自然と自分のなかでそんな気運が高まってきたのだ。

まあ目標といっても一つのチェックポイント、スポーツや武道・芸事などでいう最初の昇級審査のように、これまで詰んだ経験を測る最初の一区切りといった感じである。

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八丁尾根の鋸歯。今回はここは通らない。

 

一体どんな基準で格付けされているのかよくわからない点も多いが、手元のガイドブックによると、両神山は体力面・技術面ともに「中級者向け」とされており、「秩父」コーナーのラスボス的な扱いになっている。山の品格、距離、高低差、山頂付近の岩場の様子などを見るに、確かにそういってい間違いないだろう。

これを歩ききることができればおれは秩父を制覇した中級者なのだ。

 

登山者必携の「山と高原地図」でおれが最初に買ったのも、「雲取山両神山(奥秩父)」のタイトルだった。まだこの山域には足を踏み入れる予定もなかったが、何故か身近な「奥武蔵・秩父」でも「奥多摩」でもなく、このタイトルに手が伸びたのである。

山と高原地図 雲取山・両神山 2016 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 雲取山・両神山 2016 (登山地図 | マップル)

 

 多分、その時点でなんとなく少し先の方に、ある種「憧れ」の眼差しで眺める対象が欲しかったのだろう。

秩父地域のメイン地図の裏面には両神山の拡大地図なども載っており、暇があると時々眺めては憧れの山に想いを馳せていたのだった。

 

そんな次第で今回は、脱・初心者をめざずおれの最初の昇級審査。

 前年の暮れあたりから、雪が解けたら登ろうと待ち構えていた両神山に、4月の頭のこの日、満を持しておれは挑んだのだった。

 

両神山の登山道はいくつかあり、それぞれのコースに特徴がある。

主な登山道は日向大谷、白井差新道、八丁尾根の三つと言っていいだろう。

日向大谷(ひなたおおや)コースは両神神社への参道となるメインコース。3つのうちでは最も距離が長く変化に富んだ見所の多いルートだ。

白井差(しろいさす)新道は個人の私有地に作られたコース。規約に基づいて費用を払って入山する、よく整備された最短コース。

八丁尾根コースは、両神山の山頂から連なる鋸歯の上を通るルートで長い鎖場が連続する上級者向けのルートである。

 

今回は初めての両神山ということで、ひとまず一番メジャーな日向大谷コースをピストンする。

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登山口の標高は620m、山頂は1723mだ。◼︎総歩行距離10.2km ◼︎累積標高差1635m

 

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余裕を持って前夜泊。四阿屋山の時に来た道の駅・両神温泉薬師の湯に午前0時を回った頃に到着。他に止まっている車が1、2台。通る車も少なく、不気味なくらい暗くて静かだ。

途中で買ったミックスナッツとジム・ビームで一息ついて荷台の寝床にて就寝。

朝は6時頃に起床。あたりには霧が立ち込めていた。

 

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車で走り出し、日が昇ると霧は一気に晴れていき、雲一つない青空が顔を出す。晴れ男健在だ。道の駅から登山口までは意外と遠く、10kmほど走る。登山口まで続く一本道。

 

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駐車場に車を止め、麓の民宿両神山荘に立ち寄る。ここで駐車場の料金500円を支払うと、両神山・雲取山安全登山マップをくれた。小さく折りたたんでポケットに入る、なかなか便利な地図だ。看板犬のポチは登山者を山頂まで案内してくれることもあるという賢い犬らしい。横を通り過ぎるおれを終始もの静かに、しかし隙のない眼差しで捉えている。

ここのブログにこのポチの活躍が紹介されている。

いい山登りをしてますな。。

 

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看板の前を通ってそのまま真っ直ぐ山へ入っていく。少し歩いてから来た道を振り返ると、すぐ下に山荘と駐車場が見える。

 

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 登山口からゆっくりと登って行くと約200メートルで鳥居があります。鳥居をくぐるとその右手には、両神山を開いたとされる観蔵行者の石像が安置された観像堂があります。そして少し行った所に丁目石一番が立っています。ここから清滝まで36瞳子の名前が彫られた丁目石が、一丁(110メートル)ごとに立てられています。(日本アルプス登山ルートガイドより)

とのこと。

つーか、引用した「日本アルプス登山ルードガイド」さんのページ、さすがに良くできてるな…

可愛らしい(&タフな)山ガールさんの案内付きだし、情報もしっかりしてるし。これ見りゃおれがルートの詳しい説明する必要はまったく無いような…

 

実際おれがこの辺を歩いていた時の印象といえば「気分が良かった」とかそんな感想くらいしか出てこない(汗)。

 

気を取り直して進む。

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さらに緩やかな登りが続き、やがて七滝沢方面への分岐となる「会所」に到着。テーブルとベンチがある。

というのを写真を見て確認しているが、あまり記憶に…

 

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薄川(すすきがわ)沿いに遡行。何度も渡り返しながら苔むした沢伝いに登っていく。

 

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道端に不動明王。八海山を過ぎ、弘法の井戸に着いたところで、おれよりも少し先に歩いていた男性に追いついた。何やらその井戸らしきものを眺めている。

話しかけてみると、どうやらここの井戸をあてにしてきたが、水がまったく出ていないのでがっかりしているようだった。聞くとここの水はなかなか良い水らしいのだが、この日は完全に枯れている状態で、どこらへんが井戸なのかもわからない石の箱が転がっているようにしか見えなかった。

そのため写真も撮っていないので改めて調べてみたところ、元気な時には勢い良く水が流れ出ているようである。

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画像をこちらのブログから拝借しました。石のところから2本出ているのが水の流れ。

 

さらに登っていくと木々の向こうに何やら立派な建物が見えてくる。

 

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清滝小屋に到着。ログハウス風の立派な建物だが無人の避難小屋である。以前は管理人がいたそうだが今は小鹿野町が管理している無人小屋。中は普通にきれいな状態ではあるが、置いてある布団はみなさんいうように使う気にはなれないだろうなという感じだ。

小鹿野町で管理人でも雇ってまた営業すればいいのに、とか、そしたらそれに応募して管理人なんかをやってみるのもいいな、などと妄想。

山に住み、薪を割る暮らし(割らないか?)。。

そういうロマンチックなものへの憧れがなかなか捨てきれない。

 

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屋根付きの炊事場。平日なので先客は無かったが、普通にキャンプ場並みの設備でトイレもキレイ。テント場もあるらしい。ただしまだ山開き前ということもあって水は止まっていた。

こういうものが無償で解放されていて、その維持管理は使う側にも委ねられているということを弁えつつ大事に使わせてもらうという、そういう精神が登山という行為の中に息づいている感じ(?)っていうのが、なんかいいなあと思う。

おにぎり休憩を入れて先へ。

 

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清滝小屋の裏にある清滝。水が流れている感じがない。今日の両神山は乾いているようだ。徐々にきつくなってくる斜面を登って産体尾根に出る。

 

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尾根伝いにさらに登りが続く。木々の切れ間に山頂から続く尾根が見える。このあたりには少し残雪があったが、歩くのにほとんど支障はなかった。

鎖場なども出てくるので乗り越えながら登り続ける。

  

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両神神社に到着。本殿は簡素な作りだがなかなか立派な鳥居や独特の狛犬のスタイルなどが歴史を感じさせる。テーブルやベンチなどもあり休憩に良い場所だ。しばし休んでいると、さっき弘法の井戸のところでちょっと話した人が追いついてきた。この人とは出発したところから何度か休憩中に抜かし合ったり挨拶したり少し話したりとちょくちょく行きあうのだが、要するにペースが近いということで、なんとなく親近感が湧く。のんびり歩くのが好きなようでベンチに寝転んだりしていたので、おれも真似して寝転んでみた。真下から空を見上げるのもなかなかいい気分だ。

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休憩がてらしばし談笑。

話の流れでどんな山に登るのかと聞いてみると、意外にも両神山しか登ったことがないそうで、今回で3回目とのことだった。別に近所に住んでいるというわけでもなく、ここまでくるのはおれと大差ないような距離があるというのに、他の山には特に興味がないそうだ。

そんな山との付き合い方もあるのかと妙に納得したとこで、気持ちよさそうに寝転んでいるハイカーさんに別れを告げ、先に向かう。

ちなみにこの日、この人も含めて出会ったのは4、5人程度だった。

 

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ひたすら稜線を進む。下に巻いていく道もあったようだがとにかく尾根を歩いて行った。快適な道だ。

 

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山頂手前。最後の鎖場を越える。特に高度感などもなく見た目よりすんなり登れる。

 

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で、到着した山頂は比較的狭い感じで、岩がゴツゴツしていて足場があまり良くない。周りは切れ落ちていて、岩の上に立つと少し緊張感があった。

隅の方に陣取って、今日のカップラーメンはチリトマ。

程なくさっきのハイカーさんも登ってきて、少し離れた場所に荷物を下ろしていた。

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完全に開けた山頂は360度のパノラマビュー。雲ひとつない晴天の下、しばらくの間景色に見とれていた。

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秩父の山々とその向こうに八ヶ岳連峰。  

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浅間山、そして富士山。

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遠く谷川連峰、北アルプスまで見える。

 

その後また弘法の井戸のハイカーさんと言葉を交わしたのだが、なぜかこの人は井戸が枯れていたことや清滝小屋の水道が止まっていたことに責任を感じているようで、しきりにおれの水の心配をしてくれるのだった。 

最初から特に水場で補給する予定はなかったが、 時期的なこともあって水はそんなに持ってきてはいなかった。言われてみれば若干不安でもなかったが、まあ多少喉が乾くこともあるかといった程度に考えていたのでそんな感じのことを言うと、「水は大事ですよ」と自分の水筒から分けてくれた。

見ず知らずの人の親切に戸惑いつつも、せっかくの厚意を無駄にするのも悪い気がしたのでありがたく頂戴し、まだしばらくまったり過ごすというハイカーさんに別れを告げて山頂を後にした。

 

今回はピストンルートなので、来た道をそのまま戻る。

いただいた水のおかげで帰り道が少し楽になったのは確かで、下山した時には水は全部飲みきっていた。

 

少しだけ時間にも余裕があったので、朝出てきた道の駅の「両神温泉薬師の湯」に寄らせてもらった。

正直なところ、平日に家族を置いて一人自分の好きなことに浸っているということに若干の後ろめたさを感じており、山に来た帰りに温泉に浸るとか土地の美味いものを食べるとかするのは控え気味にしているおれであるが、まあ今回はなんとなく、ひとつの目標地点を通過したことのささやかな祝いとして、温泉と風呂上がりのコーヒー牛乳を自分に許してみた次第である。

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もちろんこの後いつもの時間までに子供達を迎えに行って、仕事で遅くなるヨメに代わって食事、風呂、寝かしつけと、抜かりなくこなしたのは言うまでもない。

しかしながらおれがこの山行を経て登山の中級者になれたという実感が得られたかといえば、そんなものは現在に至るまでまだ得られていないというのが現状である。

 

 以上、山頂の絶景と行きずりのハイカーさんの印象がやけに残った山行であった。

 

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