おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の二十二 乾徳山 2015/5/21

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普段何かをやるときには、あまり基本にとらわれずに出鱈目自己流でやってしまうことが多いのだが、こと山登りに関しては比較的律儀な感じで基本に忠実にやってきたようで、特に意識したわけではないのだが、ここまで登ってきた山は未だ標高2,000m以下のものばかりなのであった。

行こうと思えばロープウェイなどで簡単に標高が稼げる山もあるのだが、自分の足で少しずつ登る山の高度を上げていきたいという気持ちがあったようで、我ながらこの生真面目な山との向き合いっぷりが微笑ましくもある。

ちなみにここまで一番高いのが谷川岳の1977メートル。

ここから先は奥秩父や北関東方面で少しずつ本格的な山の経験を積んで、その先には八ヶ岳日本アルプス、富士山と、絵に描いたような教科書的なステップアッププランをおぼろげに抱きつつ、その辺を踏まえておれは次に登る山を探していたのである。

 

そんな感じで一皮むけたおっさんの次のチャレンジは2,000メートル越えの山登り。そしてその第一歩として白羽の矢が立ったのは、奥秩父山塊南側の前衛に位置する甲州の山、乾徳山だ。

乾徳山と言えば山頂付近の岩塊登りの印象が強い山だが、(おれの持っているガイドブックやネットの情報を見た限りでの印象ですが…)実際に行ってみるとそれよりも途中の山腹あたりに広がる比較的平坦な場所、国師ヶ原から扇平あたりまでを歩く心地良さや、そこからの富士山を背後に据えた甲府盆地の見晴らしなどが強く印象に残る山行となった。

 

高低差や歩行距離などからすると比較的ハードな山登りだか、様々な様相を見せる山の景色の中を飽きることなく歩くことができ、その分きつかった印象というのがあまり感じられない。

 

そんな感じの乾徳山。とても楽しく歩ける魅力的な山であった。よって今回はあまり長ったらしい前置きはせず、おれが感じた楽しい乾徳山の紹介を少し濃いめにやってみたいと思う。

 

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徳和川傍の公共駐車場(協力金500円要)に車を停めて、川沿いの道を遡行。前宮神社(乾徳神社)を過ぎて林道をしばらく歩き、右手に分ける登山道へ。山腹の急登を経て国師ヶ原、扇平を抜けてむき出しの岩が聳える山頂へ。山頂を抜けて回り込む下山道は急な下を経て高原ヒュッテを過ぎて国師ヶ原に戻りさらに道満尾根を通って徳和の集落へ戻る。歩行距離11.5km、標高差約1200m。

 

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登山口まで距離があるので前日の夜に出発。秩父を抜けて国道140号の彩甲斐街道(雁坂みち)を行く。

翌日には晴れるはずだが夜はかなり荒れる予報で、途中雨が降り出し目的地が近づくにつれて雨も風も強まってくる。そして車中泊地の「道の駅みとみ」に着いた頃にはまさに暴風雨。山の中で雷にも晒される状況となる。

いつものように荷台に寝袋を敷いて寝ようとするが屋根を叩く雨の音がうるさいわ風で車が揺れるわ雷がかなり近い感じで鳴ってるわでなかなか寝付けなかった。

が、次第に風雨も弱まっていき2時前ぐらいには眠りにつくことができた。

 

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道の駅みとみの駐車場で6:00過ぎに起床。駐車場や施設の建物は山の影に入っているがその向こうの山には日が当たっている。雨上がりで空気も澄み空も晴れ渡る至極快適な朝だ。この少し先に西沢渓谷、甲武信ヶ岳への登山道があるが、今回はさらに車を走らせて乾徳山の麓、徳和集落へ向かう。

 

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15台ほど入る駐車場は半分くらい埋まっている感じ。平日登山だとその辺をあまり気にしなくていいのが良い。

向かいに止まった車からは二人組の山ガールさん(恐らく同年代?)が一足先に出発していった。時間に余裕がありそうなのでゆっくり準備して7:30過ぎ、出発だ。

 

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徳和川に沿ってしばらく歩くと道の左手に金属製の鳥居を構える質素な作りの神社がある。グーグルMAPには前宮神社、鳥瞰図には乾徳神社と表記されている。どっちだと思って「山と高原地図」を見たら乾徳山前宮神社となっていた。。

まあ、どうでもいい話である。

 

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神社より先は道幅も狭くなり舗装もなくなった林道を進む。途中に立っていたガイドマップによるとこのまま進んでいくと徳和渓谷というのがあり、その辺りを周回できる遊歩道もあるとのこと。

なかなか雰囲気も良さそうで、距離的にはさほどでもなさそうなので「見てみようかな」という気もしたが、今日の行程を考えると調子に乗って寄り道などしたことが後で仇となる可能性が高いと思い直し、さらに進んだ先から素直に登山道へ向かうことにした。

 

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登山道に入ると最初のうちは、山腹の急な斜面をつづら折りに高度を上げていく杉林の中の道になる。暗く地味な登りだが、スタートダッシュで一気に登る。登り初めてすぐに駐車場にいた山ガールさん達に追いつき、先に行かせてもらった。

なかなか足の調子も良さそうである。

 

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高度が上がるにつれて針葉樹から広葉樹へと植生が変わってくる。途中に水場が2箇所。「銀晶水」「錦晶水」と表示されている。

「銀晶水」は登り始めてすぐの針葉樹林帯の中にあり、水量も少なくてなんかぱっとしない感じ。「錦晶水」そこからしばらく高度を上げた広葉樹林帯にあり、敷設された塩ビ管から流れる水量も豊富ないい感じの水場で、顔を洗い手に掬って飲んでみたが、なかなか美味い水だった。

 

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最初の急登を登りきり9:10頃、森を抜け出て山頂方向への視界が一気に開ける。この辺りの平坦な台地が国師ヶ原と呼ばれる一帯だ。暗い森を抜けた後の青空と緑のコントラストが眩しい。

 

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開けた道を進んでいくと今回の登りルートと下山ルートが交わる交差点に出る。

国師ヶ原の表示板もここに設置されている。左方向へ行けば避難小屋の高原ヒュッテ。ここからも見えるが帰りに前を通るのでその時にチェックさせてもらうことにする。

 

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しばしの間、再び木々の中を歩くが、この辺りは木の密集度が少なめで明るい感じだ。いくつか巨岩が転がっており、その上に地蔵だか仏様だかの像が設置されていたりする。

役小角(えんのおずぬ)像:願主 坂本安右エ門」とあるが…

 

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さらにいくと前宮跡と記された巨岩。さらに進むと再び森を抜けて広い草原に出る。

 

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扇平は南面が大きく開けていて甲府盆地とその向こうに富士山を望む。絶景。

 

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だだっ広い山腹の草原。生えている草はカヤで、このように一面に群生している場所を「カヤト」と呼ぶらしい。

 

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扇平は稜線のあたりに見える月見岩を目指して草原を抜けて登っていく。岩の前で大平方面からの別ルートに合流。左方向に向きを変えるとあとは山頂方向へまっすぐ進んでいく感じだ。扇平最後の岩は手洗石。窪みに水が溜まっているが手を洗う気にはなれない。

 

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扇平を抜けると岩場の急登。しばし黒木の森(亜高山帯針葉樹林だそうな)の中のがれ場を歩く。徐々に斜度が上がっていきやがて森を抜けると岩登りの本番が始まる。

 

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最初の大岩がヒゲソリ岩。この辺だと思う。

 

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カミナリ岩の長い鎖。難易度はさほどでもない感じ。

 

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鎖場が続くが全体に難易度は高くない。というか高度感がさほどないため気分が楽だ。「雨乞い岩」「胎内」といった巨岩を次々に乗り越えたりくぐったりしながら一気に登りつめていく。

 

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甲府の町、富士山。周囲の山々。高度が上がるにつれて見晴らしがさらに良くなる。

 

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最後の一枚岩が「鳳岩」。平な岩で手掛かりはないので鎖に頼って登るしかない。この写真で見るよりも実物はもう少しでかい感じだと思う。人が映ってると大きさがわかると思うのでネット上の画像でも参考にしていただきたい。迂回路もあり。

 

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山頂は360度の展望。山頂の風情といい、周囲の山々といい、青空と雲の感じといい、とても気に入っているパノラマ画像。このブログのTOPの画像がこれ。

 

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 山頂はそこそこの広さがあり、まばらに他の登山者もいた。山で人と会った時にはなるべく爽やかな感じで挨拶したり、きっかけがあれば言葉を掛けたりするようにしている。そんなに話し込んだりしなくても2、3言葉を交わし労を労う(ろうをねぎらう)だけで、とても気分が和む。

一人で出かける登山でも、一期一会で誰かと言葉を交わす機会が得られるというのも山の楽しさの一つだと思う。

ここでは先にいた単独登山女子の方と、二人組の先輩ハイカー男子の方と挨拶がてら言葉を交わしつつセブンイレブンオリジナルの中華そばを啜った。

しばらくすると朝駐車場で見かけた二人組の同年代山ガールさんが登ってきたので写真を撮ってあげ、お返しにおれの写真も撮ってもらった。

山ガールさんに写真を撮ってもらうと表情が柔らかくなっていい人っぽい写真がとれるのがありがたい。

そしてしばしの談笑ののち、各々バラバラに下山の途につく。そういう感じもまたいい。

 

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下山はちょっと岩を降りた後、かなり急な感じのガレ場の斜面を下る。思いのほか脚も元気でテンポよく軽やかな足取りで下っていけた。

 

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急な斜面を下り切ると国師ヶ原まであと20分くらい。

ゆるやかな下り道を抜け、ほぼ平坦となった道を高原ヒュッテの方へ歩いていくと…

30mほど先で、突然下生えの藪をガサッと揺らす音と共に比較的でかい動物が飛び出してきた。

山を歩くにあたり、「ツキノワグマ」くらいならなんとか対処もできるだろうなどと高をくくっているのだが、実際に動物が出てくるとなると、鳥が木を揺らして飛び立つだけでビクッ!とくるものである。

そんな感じで不格好に身構えるおれの前に出てきたのは。。

 

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鹿ちゃんだ♪

山で野生の鹿を見るのはこの時が初めてだった。

最初は一頭だったが、そのすぐあとからどんどん出てきてあっという間に20頭ぐらいの群が姿を現した。

 


おれの他にも何人か足を止めて眺めていたが、鹿たちは全く物怖じすることなく目の前を歩き回っている。餌でも出せば寄ってきそうだがこれだけ数がいるときりがないだろうし、人がそういう形で野生動物の暮らしに干渉するのはよくないだろうということで眺めるだけに留めた。

 

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そのすぐ先に高原ヒュッテ。数年前までボロボロで泊まれるような場所ではなかったようだが、ちょうどこの頃建て直したらしく、真新しい綺麗な建物になっていた。

だが中に入ってみると奥の壁に「◯◯参上!」とスプレーペイントで落書きが。。

バカなガキはどこにでもいるようだが、こういうところには立ち入らせたくないものだ。。

少し離れた場所にさっき一緒に鹿を眺めていたヨーロッパ系と思しき登山者がテントを張っていた。

 

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国師ヶ原で往路を横切り道満尾根経由で徳和集落に向かう。途中林道を横切るあたりで少し道が分かりづらい箇所もあったが、ちょうど車を止めて作業していた地元の人に聞くと、親切に下りルートを解説してくれた。登山道を新しく整備した感じのところもあり、さっきの高原ヒュッテといい、ここのところで少し全体に整備し直しているような印象を受けた。

 

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鹿よけのゲートを潜って徳和集落へ戻る。この時点で14:30。1日の山歩きを終えるにはちょうど良い時間だ。しかしこの山里で、人々は何を生業にして暮らしているのだろうか。都会育ちの観光登山者には想像もつかない。

こんなのどかな集落で生活を成り立たせることができるなら、そういう暮らしもいいなぁという、漠然とした憧れは常にあるのだが。。

 

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のんびりと集落を眺めながら歩き、毘沙門天にお参りしてトイレを借り、駐車場に戻ったのが14:45分過ぎ。帰り支度をしているところに二人組の山ガールさんと単独登山女子の方が次々に下山してきた。

お互いの労を労い、鹿の話などして暫しの休息の後、皆それぞれの帰途につく。

 

…といった感じの乾徳山。雨上がりで空気も澄んだ晴天の下、変化に富んだ非常に楽しい山を満喫させてもらった。まあ日本二百名山に数えられる山だし、その名に違わぬ名山であることは間違いないが、来る前に抱いていた漠たる印象をはるかに上回る、間口が広く懐が深い感じの燻し銀の山として、おれ的になかなかポイントの高いオススメの山となった。

これからの季節、いいっすよ。

 

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◼︎どの地図でも乾徳山は端っこ

山と高原地図 大菩薩嶺 2016 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 大菩薩嶺 2016 (登山地図 | マップル)

 

 

山と高原地図 雲取山・両神山 2016 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 雲取山・両神山 2016 (登山地図 | マップル)

 

 

山と高原地図 金峰山・甲武信 2016 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 金峰山・甲武信 2016 (登山地図 | マップル)

 

 

◼︎車中泊で行った山


 

yoshixim55.hatenablog.com

 

*1:登山者用の駐車場に据え付けられた乾徳山鳥瞰図。山梨市観光課作とのことだが、この周辺の山の標識などに同じタッチの絵や文字がよく見受けられる。なかなかいい感じ