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おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の六 岩殿山 2014/6/17

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このブログを書いている今現在(2016年2月)、大河ドラマでは「真田丸」というのをやっている。歴史は嫌いじゃないので大河ドラマは毎年なんとなく見始めるのだが、ほぼ途中で挫折する羽目になる。歴史の狭間で国を動かすような選択や決断をした人物を描くのに、その行動原理がヒューマニズムや家族愛といったものに結びつけて描かれるのを見て、どうもシラけてしまうのだ…

 

と、何の話だかよく分からない感じになってしまったが、何を言いたいのかと言うと、その「真田丸」のドラマの冒頭のに出てくる武田氏滅亡の話で、武田勝頼の家臣、織田に追い詰められて落ち延びる勝頼を最後の最後で裏切った小山田信茂の居城があった岩殿山が、今回の山行の舞台だと、そういう話である。

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で、この岩殿山だが、武田勝頼が最後の頼みで逃げ込もうとした山城というだけあって、なかなかに険しい天然の要害である。切り立った断崖がむき出しの岩山で、城があった山頂からは大月市街が一望できる。

今回のコースはこの岩殿山を登ったところから、さらに奥の断崖絶壁である「稚児落とし」まで、いくつか岩場を越えならが尾根を縦走し、大月駅まで帰ってくるという周回コースとなる。

標高は一番高い岩殿山頂で634m(スカイツリーと同じ)、移動距離は7㎞程度で半分は平地の舗道歩き、一度登ってしまえばさほどのアップダウンもないという、今回こそは膝を痛めることなく歩けそうなコースだ。

 

駅を起点とするコースのため、大月駅から出発する。中央本線に揺られて駅に到着したのは10時半すぎ。高尾のすぐ先のような印象があったが思いのほか遠かった。

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今回は岩場での行動に主眼を置いて軽い装備で臨むので、荷物は最低限にとどめている。よって簡単な行動食しか持たないため、出発前に駅前の蕎麦屋で腹ごしらえを済ませる。観光案内所で登山口までの案内図をもらい、歩き出したのが11時過ぎ。短い商店街を抜け線路を越えて15分ほど歩いたところで登山口に到着する。

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岩殿山頂までの道は全て階段になっている。途中「岩殿山ふれあいの館」なる資料館に立ち寄り、より詳しい地図をもらった。城をモチーフとしたデザインのなかなか立派な施設だが、入館料がかかるようで、こちらは観光というわけでも無いので今回は中には入らず。

施設の張り紙や看板などが、この辺でも熊や猪が出没するとの注意を盛んに促していた。

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階段を登るにつれ大月の街が眼下に広がり始める。そして見上げると石垣の代わりのような巨大な岩の壁がそそり立っているのが見える。この城に籠城されたら下から攻め上がるのはかなり大変だろうというのが容易に想像できる。

さらに進むとやがて道を塞ぐように転がっているさ巨岩が現れるので、それを回り込むように登れば城のあった山頂に出る。

記念碑やベンチなどが設置された平らな山頂には、かつて城があったことを説明する看板が立つのみで特に城跡らしい名残は見受けられない。

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山頂までの所要時間は20分程度。見晴らしもよく、休憩には良さそうな場所だが、まだ歩き始めたばかりだし、特に長居をする理由もないのですぐに先に向かう。一旦来た道を戻り、すぐの分岐を兜岩、稚児落とし方面へ。数歩踏み込めば、そこから先は登山者の道となる。

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登山道に入ってすぐ熊出没注意の看板があるのだが、その先ですごく強烈な獣臭のする場所があった。犬の臭いを100匹分くらい濃縮したような、ムッとくる臭い。ほんのすぐ前までそこに何かがいたような鮮度がある。

後で調べると熊の臭いというのがそういうもののようだ。

今後は熊よけの鈴なども装備せねばなるまい。

本能的に足が速まる。

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 少し下ってから登り返すようにしばらく進むと、兜岩付近の岩場。どれを兜岩というのかはいまだはっきり把握していないのだが第一カブト、第二カブトとあるようで、短い区間に様々なバリエーションの岩場が出てくる。

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岩場の後半、長い鎖場を登りきったところで30代くらいの男性(上の写真の中の何処かにいるのだが、わかるだろうか)と出会った。ヘルメットを被った完全装備で、ここで岩登りの特訓をしているのだという。彼も初心者のようで、この夏にアルプスデビューするのだとか。

荷物を置いたまま、今おれが登ってきた岩場を下るというので見ていると、途中まで行ったところで固まって動けなくなっているようだ。

確かにこの鎖場を登っている時に、少し無理をする箇所があって、下りはもっと怖いだろうなと感じたのだが、どうやらそこをクリアできないようだ。

しばらく見ていたが、程なく諦めて登ってきた。

「やっぱ、ムリっすね」

と青ざめている彼におれが見本を示せるわけもなく、「この鎖場はちょっと、ヤバイっすね」などとお茶を濁して先へ向かった。

彼はその後、無事にアルプスデビューできたのだろうか…

ちなみにこの日の道中で出会ったのはこの人だけだった。

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開けた場所から振り返ると今きた道の向こうに岩殿山と大月の市街が一望できる。領主としてあの山城から支配下の街を眺めるのはどんな気分がするのだろうか。

街に行くたびに毎回上り下りするのは面倒ではないのだろうか…

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兜岩から天神山を超え、アップダウンを繰り返しながらしばらく行くと、木立の切れ間から切れ落ちた断崖絶壁が見えてくる。

「岩場歩行注意」を促す看板を超えると…

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今回のルートで一番の見どころと言っていい「稚児落とし」の崖の上に出る。

左側はそのまま100m以上切れ落ちた崖である。

下を覗く気になどとてもならず、なるべく崖から離れた方を通過する。

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しばし断崖を離れて裏から回るように歩いて行くと、程なく開けた岩の上に出る。切れ落ちた崖の上なので、少々落ち着かないが、休憩するには良さそうだ。そこから振り返ると稚児落としの断崖越しに岩殿山とここまで歩いたルートが一望できる。

ちなみに「稚児落とし」という名称だが、冒頭に紹介した小山田氏の没落にまつわるエピソードに由来するようだ。

武田勝頼に岩殿城へ籠城するように勧めておきながら門を閉ざして城に入れず、裏切りを手土産に織田方につこうとした小山田信茂は、結局「不忠者」として捕らえられ処刑されてしまう。

城主不在の岩殿城も織田軍に攻められ、落ち延びた者たちが追っ手に気付かれぬように泣き声を上げる稚児をこの崖から投げ捨てたとか。

投げ落とさずとも他にやりようはなかったのかと思わないでもないが、こんなところから落ちるなど勘弁してもらいたいとしか言いようのない恐ろしげな断崖であった。

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 稚児落としの絶景を独り占めしつつしばらく休憩したら、あとは最後のひと歩きで下山するのみだ。比較的急な下りで鎖などもあるがこれまでのルートに比べればなんてことはない。のんびり歩いて30分ほどで下りきった。

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逆側の登山口を過ぎたら集落を通る県道を2㎞ほど歩いて駅に向かう。

コースタイム4時間弱、途中少し休憩をしたが時間的には余裕がある。道に沿って流れる渓流に下りてみたり町並みを眺めたりしながらのんびりと歩く。膝の方も今回は大丈夫そうだ。

川幅がやがて広くなってくると渓流釣りをしている人の姿があちこちに見受けられる。鮎とか岩魚とか、そんな感じなんだろうか。

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一日を通して薄曇りの天気で時々晴れ間も出たりしたが、平地に出たあたりから急に雲が厚くなってきて、駅に着く頃には雷が鳴り出し、やがて雨となった。

 

駅から歩ける小ぢんまりしたルートの中に、岩場のスリルや絶景、熊の匂いまでする山深い雰囲気を堪能でき、さらに歴史にまで思いを馳せられる、お楽しみ盛りだくさんの充実コース、岩殿山。今回は雨に降られることもなく、膝を痛めることなく、快適に歩き終えることができた。あとは電車に揺られつつ心地よいお昼寝タイムを満喫するだけという、贅沢な山旅であった。

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