おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の十五 武甲山 2015/3/13 & 2016/4/2

武甲山と言えば言わずと知れた秩父の名峰であり、日本二百名山にも数えられている埼玉県を代表する山である。

秩父の街だけに限らずうちの近所の川の土手からでも秩父方面を見れば一際目を引く独立峰であり、平地から突然湧き上がるようなその山容は丹沢の大山や筑波山などにも引けを取らないカリスマ性を帯びている。だが、武甲山の見てくれを決定的に特徴づけているのは、山の北面側がセメント業者によって掘削され、垂直の壁のように削り取られた姿だろう。

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 秩父盆地を見下ろすようにどどーん!とそそり立つ秩父のシンボルと言っても過言ではない存在感を持つ山だけに、あそこまで無残に削り取られている様を見ると、正直なんとかならないもんかと思う。人間の主観で差をつけるのもなんだが、どこぞの山奥の名もない山ならまだしも秩父の街を見下ろす場所にあれだけ堂々とそびえる山を削り取らなくても… と思ってしまうのである。

 

まあ、そんなことを感じるのも山を登るようになったからであり、実際に自分が登るまでは気に留めもしなかったようなことだ。それに、自然を食い潰すことで得られる恩恵にどっぷり浸かって生きていることを思えば、一つの山に執着してその自然が破壊されるのを嘆いたところでおこがましいだけの話なのかもしれない。

そこで日々働き、生活の糧を得ている人もいるのだから、部外者が情緒的なところから口をだすこと自体が傲慢な奢りのように感じる節もある。

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横瀬駅付近、国道299号線からとウチの近所の土手から見た武甲山。一際目を引くランドマークだ。

 

ただそれでも、やはり何か釈然としない部分が残る。あの山を観光資源にして地域を活性化するといった下世話なレベルの話から、万物に宿る神々を敬う霊長類の叡智に基づく高尚な視点まで踏まえて考えても、やっぱりなんかもったいねーな、と思うわけである。

そしてそれが過去のある時期に行われていたというならまだしも今現在も日々削られ続けており、その山容も変わり続けているのだと思うと、やっぱりそれでいいんかなと、余計な危惧を抱くわけだ。

良質なセメントがもたらす一部の企業の利潤と、唯一無二の自然が産み出した奇跡の造形の価値と、かけがえのないものはどっちだと考えたときに、なんというか人間の限界というか、この世の無常を感じる次第である。。

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大正時代の武甲山。山の形からして違う。

 

と今でこそそんな思いで眺める武甲山だが、当初は登る山としてもあまり関心を持っていなかった。古くから人々の暮らしに関わってきた街に近い山ということもあり、なんとなく人の手が入っている観光登山的な山の印象を持っていたのだ。それに、よく紹介されている山頂から浦山口に抜けるコースを行くとなると、登山口となる一の鳥居までのアクセスが難となる。横瀬駅から国道299を経てセメント工場を抜ける車道を1時間以上も歩かなければならないのだ。さらに山頂までの登りも眺望のない杉林を黙々と登る地味なものという、要するに登って面白い山では無いという印象を持っていた。

だが、何度か秩父方面に足を運びその姿を目にするにつれて、徐々に惹かれるものを感じるようになり、あの山頂から秩父の街を眺めてみたいと思うようになった。

 

そんな武甲山に初めて登ったのは1年前の3月のこと。そしてこのブログの山行記録で次に書くのは、順番からするとその時の「去年の」武甲山ということになるのだが。。

ブログを書こうと写真など見ているうちに、また武甲山に行きたくなり、つい先日の4月2日に登ってきてしまったのである。しかも前回と全く同じコースだ。

数日前に登っているのに、ブログに書くのは去年の話というのはなかなか微妙な具合である…

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というわけで今回はその2回の分をまとめて書いてしまうことにする。

1年前と今回では天気の具合などもかなり違うので、それぞれ比較してみるのもまた一興かと。

ちなみに去年は、「おれは間違いなく晴れ男だ」と思えるくらい晴天続きだったのだが、今年はさっぱりで、すでに何度か天候のせいで山行の予定が流れたりしている状況であり、先日も眺望ゼロの霧雨の中の山歩きとなった。

 

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武甲山の表参道の起点となる一の鳥居に向かうには国道299号線の生川交差点から折れた先の一本道を行く。途中のセメント工場は武甲山を登る人にはおなじみの光景。浦山口へ抜けるルートをとる人はこの道を3〜4キロ程、延々歩くようだ。

 

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鳥居をくぐった先が登山者用の駐車場。今回は土曜日ということもあり8時半頃に着いたころには8割方埋まっていた。20台くらいは置ける感じ。武甲山には表参道となる登山道を一定距離で区切った丁目石が置かれている。この鳥居が一丁目で山頂が五十二丁目となる。

 

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登山道の入り口。最初はしばらくコンクリートの舗道が続く。

武甲山の熊は凶暴で危険だということをしきりにいう人にどこかの山で会った記憶があるのだが、本当だろうか? 犬を襲って食べるとかそんなことを言っていたが。だぶん尾ひれが付いた噂だろう。。

迷わず鈴を装着。

ちなみにおれの使っている熊よけ鈴はモンベルのものなのだが、買う時に店員さんにどうしても訊きたいことがあった。

 

「チリンチリンと鳴るタイプとカランコロンと鳴るタイプでは効果に違いはあるのでしょうか?」

 

答えは「効果に差はないと思う、音の違いは好みである」というものだった。

結果、おれはチリンチリンと鳴るタイプを購入し、愛用している。

 

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渓流釣り場(養魚場?)などを眺めつつ川沿いに登っていく。十三丁目を過ぎたところで舗装道路が終わり、十五丁目から先が本格的な登山道となる。

 

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登り始めてすぐに現れる不動滝。去年と今年で水量が違うのは、単純に前日に雨が降ったかどうかの違い。

しかし人というのは同じようなアングルで写真を撮るものである。自分が山に行くようになって思うのが、山で写真を撮りたくなるスポットというのはだいたい誰にとっても似たようなものなのだということだ。自分が写真を撮った後で、他の人のブログやガイドブックなどで似たような写真を見ることが非常に多い気がする。

滝から道の傍まで樋が引いてあって水が飲めるようになっているのでありがたく喉を潤して先へ。

 

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道端に佇む地蔵たち。ありがたいのかどうなのか、微妙なものも。

ひたすら杉林の中の参道を登っていく。

 

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二十丁目、三十丁目と過ぎ…

 

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四十、五十と超える。

 

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途中にある大杉でも、同じようなアングルの写真を撮る。

 

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去年登ったのは3月初頭、1000メートル過ぎたあたりから凍結箇所が結構あった。

今年は4月でさすがに凍結はなく、雪もほぼ溶けきっていた。

 

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 山頂に着くと立派なトイレとイメージキャラクターのブコーさんによる武甲山の由緒書き看板がお出迎え。微妙なブコーさん。トイレは 5月1日の山開きまで使えないとのこと。あてにして登ってきてた女性が嘆いていたので要注意だ。

 

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 そしてそこから見上げた山頂の神社。判で押したように同じところから写真を撮るので比較がしやすい。なかなかに由緒ありげな佇まいだ。

 

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これは第一展望台についてすぐのアングル。晴れた日に登ることを強くお勧めしたい。

 

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自分を撮るかおにぎりを撮るかという違いに一年間の成長の跡が見受けられる。

標高は1304メートル。削られる前は1336メートルあったということだ。

 

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遮るものが何もなく、山頂からの眺めがほんとに素晴らしい。

これが見たくてリピートしたはずだったのだが…

 

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柵の向こうの白い空間を眺めつつおにぎりを腹に納めたら、山頂を後にしてシラジクボへ向かう。

標高差200メートル強をこれでもかこれでもかと下り続ける感じ。下りで足の調子のいい時は半分走るように、カモシカにでもなった気分で降りて行くのだが、ここではその分をまた登り返さなければならないのが辛いところだ。

 

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シラジクボ。なんとなく分かりづらい標識。どっちに行くにも急な登り坂。標高に合わせてテンションも下がる地点。振り返ると武甲山の南面の削れていない山らしい姿が見える。

「しらじ」とは北関東~東北の方言ですり鉢のことを指すため、シラジクボとは「すり鉢状の窪み」の意味ではないかと推察される。byヤマレコ 

 

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 シラジクボから小持山、大持山にかけて、去年は雪が結構残っていた。残雪は何度も溶けて固まったりを繰り返しているのだろう、ガチガチのアイスバーンと化している箇所もあり、痩せ尾根や急斜面では危険を感じる箇所もあった。

雪山歩きを考えていなかったが、最低限の備えとして簡易的なスパイクは携行していた。

で、こんなものでも付けていれば効果はあって、凍った残雪の上でも安心して歩けるのだが、黄色いスパイク部分がすぐ取れるのが難点だ。シラジクボから大持山までで5、6個は外れてしまった。

だが同じものを使った先人が落としていったと思われるスパイク部分が道の途中に時々落ちており、それを拾いながら歩いたところ最終的にプラマイゼロとなった。まさに循環型社会。。

来シーズンはもう少しまともな道具を揃えようと思う。安心のモンベルで!

 

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小持山山頂付近は今年の写真で。相変わらずガスの中で眺望ゼロ。雪のない尾根は、前日来の雨のおかげでぬかるんだ泥道が大半の印象。山頂付近になると時々出てくる岩場にはそれぞれ巻道があるようだが、そちらを行くとかえって泥が滑って危ないところもあった。ずーと霧雨の中を歩いている感じが続く

 

小持山から大持山に向かう途中に一箇所南西方向に開けた眺望スポットがある。

そこは前回昼食をとったところで今回もそこで大休止する予定のため、ここまでほぼノンストップで歩いてきた。途中、武甲山山頂やシラジクボ、小持山山頂などで休んでいる人を多く見かけたがそれらを横目に歩き続け、腹も減ってきていた。狭い場所なので先客があればちょっと難しいかもしれないが、前回歩いた時には休んでいる間にやってきた人としばし山の話などして楽しめた記憶がある。

 

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その時いらした方は大変気さくな山のキャリアも豊富な方で、初心者丸出しのおれにいろいろな経験談やアドバイス、さらに眼前に広がる尾根についての解説などもしていただき大変勉強になった。

 

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が、今回はやはり雲の中。わかっていた事だが白い空間を眺めながらの昼休みである。

先客も無かったので遠慮なくお昼セットを広げるが、どこもかしこも濡れていて、特にその辺の用意もないので腰を下ろすこともできない。ウンコ座り状態で湯を沸かしていると、それまで無風だったのに急に風が吹き始めた。もともと肌寒い感じはあったが風が吹くと急激に温度が下がっていく。

 

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それでも阿呆のように同じ写真を撮る。本当はアルミ容器の鍋焼き的なうどんを持って来たかったのだが近所のスーパーを探しても売っていなかったので、今回は「赤いきつね」となった。変わらぬ美味さだ。

食べている間に雨脚が強まりさらに気温が下がっていく。

 

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それでもウンコ座りのまま、さらにコーヒーを入れる。近所のスーパーオリジナルブランドのドリップコーヒー、キリマンジャロだ。そして同じポーズを決めてから飲む。一体何の儀式なのか、我ながら疑問である。

その間に何人かの登山者がやってきて、何も見えないことを確認して去っていった。

そしてコーヒーを飲み終える頃には寒さもシャレにならない状況となり、最後は手もかじかんできて、これ以上ここにいたら凍えてしまいそうな感じであった。山の気候の怖さを実感。

逃げるように荷物をまとめ、大持山へ急ぐ。

 

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大持山山頂。ここの看板、やはりみなさんわかりづらいようで、去年の時は「大持山」の表示の右上に「ここ」と彫ってあった。1年経った今回は彫った部分も同色に変化していてほとんど見えなかった。

そこそこの広さのある見晴らしのいい山頂だが、周囲真っ白のため今回はそのまま通過。

 

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大持山から妻坂峠は同じような土の道を比較的穏やかに下っていく。途中まっすぐに降りていく急な道がかなり滑りやすく、去年はコケて尻が泥だらけになったので、今回はただただコケないことに神経を集中して歩いた。

 

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妻坂峠で左に折れて一の鳥居に向かう最後の下り。途中斜面がごっそり崩れたようなところがあり橋がかかっていた。

 

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最後に沢を渡る箇所があり、泥だらけの靴やトレッキングポールを洗うのに丁度よい。駐車場に着くと、行きには満車状態だったのにほとんど帰った後のようで、残っているのはおれのを含めて2台だけ。みなさん早めに切り上げたのか、おれの足が遅いのか、標準コースタイム6時間を休憩入れて6時間半だから、まあそんなに遅いこともないと思うが。。それにしてもなんかおいてきぼりを食らった感じがする。ちなみに去年はプラス1時間で歩いていた。雪のせいと休憩を多くとったことも影響しているのだろう。

人様のブログなんぞを見ているとみなさん健脚揃いでずいぶんハイペースで歩いてらっしゃるが。それらと比べるとなんとも平凡な脚力だが、おれの場合はそもそもマイナスからのスタートだし、こんなところでひとまず上等ということにしておこう。

 

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 今回は往路はときがわ、越生のあたりから白石、定峰峠を越えてのアプローチ。帰りは芦ヶ久保から丸山・県民の森経由で刈場坂峠、グリーンラインと近くの山の林道を車でいろいろとチェックしてきた。地元最寄りのこの辺りは今後もお世話になることが多くなりそうなので、なるべくスムーズなアプローチルートも開拓しておきたいところだ。

 

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道の駅あしがくぼでは秩父名物の味噌豚丼。逆光で写真撮ったのでちと見ずらいか。。

以上!

 

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