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おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の三十 谷川岳・西黒尾根 2015/10/5

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日本三大急登というのがあって、甲斐駒ケ岳の黒戸尾根、北アルプス烏帽子岳のブナ立尾根、そして今回登る谷川岳の西黒尾根がそれにあたるのだという。

どんな基準でそれが選ばれたのか知らないし、調べてみても定かでない(少なくともGoogle検索の1ページ目には見当たらない)。

剱岳の早月尾根などはこれらの急登と互角以上に名もあるし、キツさで言えば西黒尾根など目じゃないくらいの感じだが、ここには選ばれていない。。

一体どういうことなのか?

 

 考えてもわからないので、これ以上深入りするのはやめておこう。

とにかくおれは日本三大急登とやらがどの程度のものなのかこの目で(この脚で)確かめるべく谷川岳へと向かったのだった。

 

群馬と新潟の県境、中央分水領の一部を成し、複雑な地形と急峻な岩壁などの影響もあって気候が厳しく、森林限界が低い。独特の山容、目まぐるしく変化する気候、そして霧の晴れ間に広がる展望は一度登った者の記憶に深く刻まれ、心の奥底から聞き取り不能の低周波を発して呼び寄せ続ける。。

まさに「魔の山谷川岳

 

前回はそんな「魔の山」をロープウェイを使って比較的お気楽に登らせていただいた。

その行為は言ってみればホラー映画をスクリーン越しに見るとか、動物園のライオンを柵越しに見るようなものである。

今回はその世界に一歩踏み込んでやろうかと… にしてもさすがに一の倉沢を登ることなどできないので、ひとまず西黒尾根を登る。

観客から一歩進んでエキストラか飼育員さんくらいにはなれるだろうか?

ちなみにホラー映画なぞ、暗い部屋で一人で見るのは御免被りたい性分である。

 

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谷川岳ベースプラザから林道を辿り登山口へ。西黒尾根経由で肩の小屋の先へ出たら双耳峰を成す山頂のトマの耳、オキの耳へ。その先の奥の院まで進み折り返したら肩の小屋、熊穴沢避難小屋を経て天神平に戻り、ロープウェイで降る。標高差1200m、平面移動距離8km、行動時間7時間弱(休憩含む)。

 

そんな次第で例によって前夜に出発、途中で寝て谷川岳ベースプラザに6時過ぎに到着。

平日でもやはり人出は多いようだ。

今回はロープウェイには乗らないので歩いて出発。ここから歩く人はやはり少数派である。

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【6:55】ロープウェイ乗り場の前を通貨してベースプラザを出る。空全体を雲が覆っているが雨にはならない予定。しかし朝の気温は10℃以下。前日は半袖で仕事をしていたのだが…

 

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一ノ倉沢方面へ。車道はすぐに通行止め。登山指導センター、谷川岳警備隊となかなか物騒な感じで気分が引き締まる。

まあ本当に危険なのは一の倉沢のクライミングルートなのであって、西黒尾根は日本三大急登というもののロープウェイができる前は一番メジャーな登山ルートだったわけで。

 

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登山口。山頂までは3.7km。その間に1200m登るわけだから平均斜度は30度くらいにはなるんかな。それがどんなものなのか、比較の対象を持たないが。

とりあえず、最初からきつい登りが続くのだけは間違いない。

 

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この木は何なのか? 一回雪で倒れたけど、そこから顔だした枝が成長したとか?

腰掛けるのにちょうど良さげだが恐れ多い感じもする。

 

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少し登ると木々が細っこい感じになってくる。早くも森林限界

 

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遮るものがなくなり、眺望が良い。ここからずっと周囲を見渡しながら尾根を登っていく。ぜいたくな登山ルートだ。

 

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岩場、鎖場が次々現れる。そんなにきついのは無かったと思う。

 

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マチガ沢伝いには厳剛新道、その向こうにオキの耳まで連なる東尾根(登山ルートは無し)。さらにその向こうに一ノ倉沢があるがここからその姿を拝むことはできない。

 

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潅木の紅葉が色とりどりで美しい。登り基調ではあるが、時々下りもある。下った分はまた登る。そうやって標高差1200m超を登るのだからそりゃキツイわけですわ。

 

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何度目かの岩場を越えて、ラクダの背。一旦コルまで降りて目の前のやつをまた登る。

 

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一見緩やかな登りに見えるが…

 

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意外と岩場鎖場が続く。上の方がガスってるな。

 

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雲の中に入ったかと思ったら。。

 

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さらに登ると雲の向こうに青空が。

 

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と思ったらまた雲の中。ここはトマからオキの間の稜線。トマの山頂は端折ります。

 

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【10:55】谷川岳最高地点オキの耳に 到着。おれの本ではコースタイム5時間となっているからちょうど1時間前倒しだ。だが、途中ベテランっぽい登山者の方に4、5人は抜かれたと思う。

まあ速さを競うものじゃないし、おれ自身たいして早いわけでもない。

でもそんな感じで登れたのかと少しだけ満足感があったりするのも事実だ。

 

西黒尾根の登りはたぶんそれなりにしんどかったのだと思うが、その「しんどかった」実感というのはいつもほとんど記憶に残らない。

よかった思い出ばかりが強く印象付けられるのである。

そして毎回、登るたび「山登りってこんなにしんどいんだっけ?」と思うのである。

この時も、天神尾根ルートとの合流地点あたりで「しんどー!」と思っていたという記憶だけはある。

だが頭の中で次の登山をイメージすると、カモシカのようにスイスイと駆け上がれそうな感じに思えたりするので厄介だ。

 

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尾根の西側(群馬側?)は駆け下りていけそうな(たぶん植生保護のためNG)なだらかな斜面。反対側は一ノ倉沢に続く絶壁だ。雲がすごい勢いで駆け上がってきては去っていく。

 

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オキの耳からさらに少し進んだあたりで休憩タイム。真下に一の倉沢を望みつつ(っても見えない)、いつものカップヌードルとコーヒーを一杯。

 

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一休みを終えて奥の院へ到着したのが【11:40】。GPSアプリの地図を見ると、このまま一ノ倉岳まで行ってさらに下れば周回ルートが取れそうだ。予定では天神平からロープウェイで降りるルートを考えていたがまだ時間も早いしそれもアリかと考え始めていた。

 

前方の稜線を眺めながらしばし思案する。地図上ではなかなか良さそうなルートに見えるがその先の様子についてはまったく知識がない。そこでここから先に進もうとしている通りすがりの登山者の方に声をかけてみる。

反応してくれた年配の女性の方の話によると、ロープウェイなどない頃は西黒尾根から登って一ノ倉岳の先を下る周回ルートは一般的なコースだったとか。

因みにその方は今回はロープウェイで登って下りは一ノ倉岳方面からという予定らしい。

「この先はどんな感じなんですかね? 西黒尾根よりもキツイんですか?」

昔はよく登ったが今回の登山は久しぶりだというその女性によると、この先の下山ルートの感じは西黒尾根と同程度だったように思うけど…

「でも、昔はぜんぜん平気だったのに、久しぶりに歩くとロープウェイでもキツイわね」とのこと。

 

 と、そんな話をしているうちに急激にガスが濃くなってきて、今まで見えていた稜線の道があっという間に霧に閉ざされてしまった。そうなってみるとこの先を下るのはなかなかに危なっかしいことのように思えてくる。

また、一人で歩いているこの女性の様子を見るにつけ、この先に行っても大丈夫なのかと余計な心配が頭を過る。西黒尾根を普通に登っていた若い頃がどうだったのかはわからないが、比較的肉付きの良い体型のその女性は天神尾根からここまでの久しぶりの山歩きで、それなりに消耗されているように見受けられるのだ。

 

「西黒尾根、なかなかキツかったけど、この先行かれて大丈夫ですか?」

人生においても登山歴においても大先輩と思しきこの女性に対し、余計なこととは思ったがそう言わずにはいられなかった。

すると女性は少しハッとした様子で、一瞬考えてから「そうね」と言った。

「やっぱりやめておいた方がいいかしら…」

聞くと、昔は平気で歩けたというイメージがあったため、行かないわけにはいかないような気持ちになっていたが、ここまで歩いてみて不安な気持ちもあったとのこと。

「ガスも濃いし無理されないほうが良いのでは?」

そう促すと女性は意外なほどあっさりと引き返すことに決めたようで、しばし談笑の後、今来た道を戻って行った。

 

さあおれはどうしようか。このまま予定通り天神平からロープウェイを使うか、霧の稜線を辿って一ノ倉岳から登りと同程度の行程を下るか。

そんな思案をしているうちに足もなかなかに疲労しているのが意識されてきた。時間に少し余裕があるくらいで無理はしないほうが良いだろう。「さて」と立ち上がったおれは未だ不気味な様相を見せている霧の稜線に別れを告げ、天神平方面へ向けて歩き出したのだった。

 

因みに。この先の下山ルートが気になって帰ってから調べてみたが、一ノ倉岳から堅炭尾根の中芝新道はいわゆる破線の難ルートで、崩落箇所などもある危険な道らしい。

どんなルートなのか、詳細に記録されているサイトがあったので以下にご紹介だ。

ブログの内容も書いている人の感じもすげーかっこいい。

powderbum.exblog.jp

おれごときが安易に行かなくて本当に良かっというわけだが、あの年配の女性が一人でここに向かうのかと考えるとそっちのほうがゾッとする。。

 

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そんな次第であとはロープウェイ乗り場のある天神平まで比較的気楽な下山道。

天神尾根は楽だ楽だというけれど、鎖場や岩の上の展望スポットなどがあり、展望も良い楽しいルートだ。人気の理由は楽さだけではないし、言うほど楽なわけでもない。

 

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肩の小屋まで降りたあたりでガスを抜け、山頂付近を覆っていた雲の塊も徐々に霧消しつつあるようだった。展望の良い稜線歩きは帰り道に至って天候にも恵まれ始め、何度も振り返っては写真を撮りながらの後ろ髪惹かれる下山行となった。

 

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絶景の稜線から山頂を眺めつつ登るこのルートもやはりすばらしい。熊穴沢避難小屋の手前あたりまで、こんな感じの稜線歩きが続き、やがて道は森林限界以下の森の中へと入っていく。

 

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天神平手前のあたりから、山頂方面を振り返る。この写真で天辺に見えるのが肩の小屋あたりで、その先の双耳峰はやはり今も雲の中だ。右側の稜線が今日登ってきた西黒尾根である。



そんな次第で天神平に戻ったのがちょうど14時頃となった。都合7時間弱の行程だが、登り始めた直後からここに至るまで、別世界のような高山の様相に浸りながらの山歩きというのはやはり谷川岳ならでは体験といえるだろう。

標高2000m以下の山にそのような様相を与える気象環境というのも実際に歩いて肌身で感じて初めてわかる印象深いものである。

 

登山ルートとしてはロープウェイの天神平がメジャー過ぎるところだが、岩場、尾根、谷筋といった幅広いバリエーションのルートがあるし、他の山と絡めた縦走などを考えると、メジャールートとはまったく違った奥深い山の世界が広がっている。

などと考えているうちに標高1977mの谷川岳が男一匹、アルプスの山々に向こうを張っている孤高の存在のように思えてきた。

 

今年もまた行きたい気分になってきたぜ… 以上。

 

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◼︎この辺の山域も眺めて楽しい。

山と高原地図 谷川岳 苗場山・武尊山 2016 (登山地図 | マップル)

山と高原地図 谷川岳 苗場山・武尊山 2016 (登山地図 | マップル)

 

 

◼︎過去の谷川岳と周辺の山

 

 

 

 

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