おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

其の三十八 雲取山(三峰口〜雲取山荘) 2016/4/21

f:id:yoshixim:20170301203909j:plain

2015年の暮れから16年の前半にかけての時期を振り返ってみると。

谷川岳を登ったあたりを最後に、なんとなくスカッとしない、停滞気味の山行が続いていた感が否めないのだった。

子供を連れての近場の低山だったり、ホームグラウンドでのトレーニング的な山行だったり、ちょっとチャレンジングな(低レベルですが)山行では天候やら準備不足やらがたたって撤退を余儀なくされたり。。

 

そんな状況を打破すべく狙いを定めたのが、埼玉県と東京都の境、奥秩父主脈の一角を成す日本百名山でその標高2017mが今年の頭に注目を集めた東京都の最高峰、雲取山なのであった。

 

f:id:yoshixim:20170301202350j:plain

雲取山へは奥多摩側からも秩父側からも登ることができる。が、登山口から山頂までは結構な距離があり、日帰りとなると健脚者が気合い入れて早朝に発ち、一日ガッツリ歩く感じの印象だ。最短ルートは奥多摩側の鴨沢登山口からのピストン。頑張ればなんとか日帰りできそうではあるが、おれの脚では一日中ただ歩き続けるだけの修行登山となってしまうのは目に見えている。

 

まあそれはそれで悪くはないと思うが、しかし。

埼玉県民として、この雲取山奥多摩側からピストンするだけでいいのだろうか?

埼玉の山として味わっておかなくていいのだろうか?

という思いが頭を過るのである。

 

やはり雲取山に行くなら秩父側の三峰口から奥多摩に抜ける縦走ルートを行ってみたい。東京と埼玉の県境(それと山梨も)の最深部へとせっかく赴くのだから、やはり時間をかけてたっぷりと味わいたいところだ。雲取山というのはそういう楽しみ方が合った山なのだとおれは思うのである。

 

f:id:yoshixim:20170301202349j:plain

で、ピストンするなら登山口まで車で行けばいいのだが、入口と出口が異なる縦走となると、アプローチには公共交通機関を使わなければならない。家の最寄り駅から電車で出発し、登山口まではバスに乗ることになる。始発で向かってもアプローチにそれなりに時間がかかるので、登山口から朝一番に出発というわけにはいかない。

 

平日に山に向かうとなるとバスの本数などは極端に少ないので、そこに時間を合わせて出発する必要がある。それらの下調べを含めた手続が面倒な反面、旅気分を盛り上げたりもするのである。

楽しいことというのは基本的に面倒くささと隣り合わせのものなのだ。

 

そんなわけで面倒くさついでに準備なんかも入念にやってみた。

 

まずはかねてより懸案になっていた山岳保険。これはモンベルあたりと迷ったが、純粋に遭難時の捜索費用の保険ということで考えてjRO(ジロー)に加入。

jRO 日本山岳救助機構合同会社

内容も費用もシンプルなのであれこれ考えずに済むのがいいところ。

 

さらに今回の山行に合わせていくつかのアイテムを買い足してみたのでいくつかご紹介。

 

まずはコッヘル。

今まで山に持っていく調理器具と言えばヤカンのみだったので、山メシの幅を広げるべくの第一歩である。

DUG(ダグ) POT-L DG-0208

DUG(ダグ) POT-L DG-0208

 

似たような商品がいろいろとある中からこのちょっとマイナー(?)なメーカーのものを選んだ理由としては、蓋側の持ち手がしっかりと持てる形状になっていること、大きい方に注ぎ口があること、中にガスやバーナーなどを格納できるサイズであることなどが挙げられる。細かいことだが実際に使うことをイメージして他のものと比較するとその辺がとても使い良い感じにまとまっているように思えたのだ。

 

そして椅子。

山で休むなら切り株なり石ころなり地べたなりに座ればいいと思わないでもないが、調理などするのであればきちんと腰を据えられる椅子など持っていてもいいのでは?と考えた。

ロゴス チェア 7075ポケットスツール 73175000

ロゴス チェア 7075ポケットスツール 73175000

 

 一番軽量コンパクトで信頼の置けるメーカーの商品ということでこれを選択。持ち運びには便利だが山で使うと脚が地面に刺さるのが難点。。

 

さらにグローブは冷たい4月の雨に濡れても良いものを。

お気に入りのブラックダイヤモンドのやつが雨にまったく対応しておらずにひどい目にあったのでその辺の対策ということで。

  

と、準備が整ったところで、あとは雲取山荘に予約を入れて当日の好天などを祈るのみ。

予約の電話には比較的ぶっきらぼうな対応だか、決して嫌な感じではない。

ぶっきらぼうだと感じるのはこちらが普段お客様扱いされるのに慣れすぎているだけなのだろう。

 

そんなこんなで当日がやってきた。

初日は夕方(遅くて16時くらいを想定)までに雲取山荘に到着するつもりで、最寄り駅から電車に乗ったのが7時過ぎ。途中で西武秩父線に乗り換えて秩父方面へ向かう。

f:id:yoshixim:20170301202345j:plain f:id:yoshixim:20170301202346j:plain

所沢からは特急レッドアローの初体験。当然赤い矢の如き流線型がホームに滑り込んで来るものと思いきや、レッドアローは灰色のずんぐりとした電車だった(赤いのもあるらしい)。それでも普段あまり電車に乗らないおれとしては特急というだけでテンションが上がる。もちろん時間も大幅に短縮されるわけだから特急料金の530円なんて安いもんだ。

 

f:id:yoshixim:20170301202347j:plain f:id:yoshixim:20170301202348j:plain

西武秩父線から秩父鉄道に乗り換えて終点の三峰口からバスで。。と思っていたが西武秩父駅からバスが出ていてそっちの方が乗り継ぎも楽で到着も早かった。

秩父鉄道や荒川の流れと並行しするように国道140号を辿り、鉄道の終点からさらに進んで道の駅大滝温泉を超えてから秩父湖方面へと道を分ける。山の中の道だから大きく回り込む感じになるのは仕方ないが、国道を離れてから三峰口までの登りはうねうねと大きく切り返しながら上がっていく感じでやたらと長く感じられた。

そんなこんなで三峰神社に着いたのが10:30。あまりのんびりしている時間は無いのだが、せっかくだから三峰神社くらい見ておきたいところだ。

 

f:id:yoshixim:20170306174239j:plain f:id:yoshixim:20170301202351j:plain

駐車場から右手にしばらく歩くと見えてくる鳥居は三ツ鳥居といい、読んで字の如く三つの鳥居が合体したような格好になっていて日本に7つしかない珍しいものらしい。左右を守る狛犬はオオカミとのこと。

鳥居をくぐってしばらく行ったところで見えてくる立派な門が隋身門。三峯山というのは白岩山、妙法ヶ岳、雲取山の三山のことを指すが、神社のあるこの場所(山)をそう呼ぶ場合もあるようだ。ちなみに神社の三峰山の標高は1102m。

 

f:id:yoshixim:20170301202354j:plain

そしてさらに奥に拝殿が鎮座している。秩父三社に数えられるだけあって荘厳な意匠がこらされているが、おれの写真の再現性が低いのが残念だ。

登山の無事を祈願して、出発だ。

 

f:id:yoshixim:20170301202352j:plain f:id:yoshixim:20170301202353j:plain

赤いおベベのオオカミさんたちに見送られ登山道へ向かう。

 

f:id:yoshixim:20170301202355j:plain f:id:yoshixim:20170301202356j:plain

駐車場方面に引き返し、そのまま真っ直ぐ進んでいくと奥宮(妙法ヶ岳)へと向かう参道となる。参道の入口が雲取山の登山口でもある。<

 

f:id:yoshixim:20170301202357j:plain f:id:yoshixim:20170301202358j:plain

しばし舗装された細道を歩くと左手に妙法ヶ岳(奥宮)に向かう参道が分かれる。

この鳥居の向こうにもいずれ行ってみたいところだが今回はそのまま直進。

 

f:id:yoshixim:20170301202359j:plain f:id:yoshixim:20170301202400j:plain

さらにしばらく歩いたところに登山届投入箱が設置されていた。ついに本当の雲取山へのスタートといった感じ。そしてその向かい側に立てられた看板がさらに登山気分を盛り上げてくれる。名のある漫画家さんでもなければ描けないレベルのなんとも味のあるイラストがなんとも。。。

しかもこれから登ろうってのに「こんな山と思っても」とは。。

ちなみに看板の左下にある「秩父市」の文字は後付けで貼り付けられたもののようで、下にはたぶん統合される前の「大滝村」の表示があることが推測される。とすれば統合される2005年以前からここに立つ由緒ある看板ということになるわけだが。。

 

と、まあそんな感じで始まった雲取山。このあたりで今回のコースをご紹介しよう。

f:id:yoshixim:20170301204124p:plain f:id:yoshixim:20170301204056p:plain
バスでやってきた三峯神社からスタートし、初日は霧藻ヶ峰、白岩山を経て雲取山荘まで約9kmほど、標高差1000mちょいの登り。翌日は夜明け前に雲取山頂に登ってご来光を拝んだら一度山荘に戻って朝食などとってから出発し、約23km歩いて奥多摩駅まで、七ツ石山、鷹ノ巣山、六ツ石山と辿って降りていく。

 

f:id:yoshixim:20170301202401j:plain f:id:yoshixim:20170301202402j:plain

曇りがちの空の下、まだ春の手前の冬枯れた木々の中を進む。

秩父側の道はなんとなく荒涼感が漂う。

 

f:id:yoshixim:20170301202403j:plain f:id:yoshixim:20170301202404j:plain

妙法ヶ岳への奥側の分岐。同じ趣旨の同じ作りの道標の新旧。

 

f:id:yoshixim:20170301202405j:plain f:id:yoshixim:20170301202406j:plain

炭焼平【12:00】、地蔵峠【12:30】と越えていく。

 

f:id:yoshixim:20170301202408j:plain f:id:yoshixim:20170301202407j:plain

霧藻ヶ峰手前の眺望ポイント。和名倉山方面と両神山方面への視界が開ける。

 

f:id:yoshixim:20170301202409j:plain f:id:yoshixim:20170301202410j:plain

休憩所の手前。コースの途中にトイレがあるというのはありがたい。その先、橋っぽいのを超えたことろが休憩所。

 

f:id:yoshixim:20170301202411j:plain f:id:yoshixim:20170301202412j:plain

【12:44】霧藻ヶ峰休憩所に到着。売店は土日には営業しているようだがこの日は平日なのでお休み。道中人に会うこともなく、ここにも誰もいない。

 

f:id:yoshixim:20170301202413j:plain

そして昼飯。新調したコッヘルで湯を沸かしてインスタント味噌汁。それとおにぎりという豪勢な山メシ。。

 

f:id:yoshixim:20170301202414j:plain f:id:yoshixim:20170301202415j:plain

秩父宮の記念碑を超え、お清平までしばし下る。

 

f:id:yoshixim:20170301202416j:plain f:id:yoshixim:20170301202417j:plain

お清平。お経平と表記することもあるようだが。

標高1450mで霧藻ヶ峰から70mほど降りた感じ。

 

f:id:yoshixim:20170301202418j:plain f:id:yoshixim:20170301202419j:plain

そしてここから一気に急登が始まる。鎖場をトラバースして、

f:id:yoshixim:20170301202420j:plain f:id:yoshixim:20170301202421j:plain

梯子を超えて登りきったら、

f:id:yoshixim:20170301202422j:plain f:id:yoshixim:20170301202423j:plain

前白岩の肩、標高は1580m。さらに尾根道をジリジリと登っていく。

 

f:id:yoshixim:20170301202424j:plain f:id:yoshixim:20170301202425j:plain

前白岩山1776m【14:30】、白岩山1921m【15:30】着。この間写真も記憶もなし。この一時間の間、おれは何をしていたのだろう。。 徐々に天気が怪しくなってきている。


このあたりからしばらく風の通り道なのか、ちょっとした暴風雨状態の中、先を急ぐ。

 

ほとんど人と会うこともない山の中で、雨も風も強まっていく。あと一時間ほどで山荘に着く予定だが、なかなかに心細い状況だ。

f:id:yoshixim:20170301202426j:plain f:id:yoshixim:20170301202427j:plain

白岩山の山頂から5分ほど歩いたあたりに芋ノ木ドッケの標識があるが、地図で見る限りどう考えてもここが山頂ということは無いような場所である。なぜここに標識があるのかは不明で、調べてみてもなかなか要領を得ない。なんとも微妙な扱いの山のようだ。ちなみに芋ノ木ドッケは東京都では雲取山についで二番目の標高の山とのこと。


風が強まり木々のざわつく感じが不気味な芋ノ木ドッケ(の標識の場所)。

しかしこの先に少し進んで稜線をそれると、それまでが嘘のように風はピタリと止んでしまうのだった。

 

f:id:yoshixim:20170301202428j:plain f:id:yoshixim:20170301202429j:plain

芋ノ木ドッケから歩くこと40分ちょいで大ダワに到着。ここから雲取山荘方面に男坂・女坂と分かれるのだが、そうなるとやはり「男たるもの男坂」という呪縛から逃れることはできないのだった。

どれほどの坂だったのが今となっては記憶の及ばぬところだが。

 

男坂を登りきって。。

f:id:yoshixim:20170301202430j:plain

雲取山荘に到着〜、かと思いきや。

なんかボロい、つーか、廃墟。。

これは「雲取ヒュッテ」とかつて呼ばれた山小屋の残骸。往時は雲取山荘の向こうを張って営業していたそうだがずいぶん前に閉鎖してしまったようだ。いまにも崩れそうな佇まい。とは言えこんな感じで営業してる小屋もどこかにありそうではあるが。。

今日の目的地、雲取山荘はもうちょい先になる。

 

f:id:yoshixim:20170301202431j:plain f:id:yoshixim:20170301202432j:plain

気を取り直して進むと見えてきた。

廃屋のヒュッテとはうって変わって綺麗な感じの建物だ。

 

f:id:yoshixim:20170301202433j:plain

【16:46】雲取山荘到着。

4月とはいえ雨の中を歩いてきて、体は冷え切っていた。風呂にでも浸かって温まりたいところだが、ここは山小屋。温泉宿ではないので風呂など望むべくもない。

代わりというわけではないが部屋には炬燵が用意されていた。

f:id:yoshixim:20170301202434j:plain

炬燵に潜り込むと体が一気に温まるが、部屋の空気は冷たい。手を出していると悴んでくるので時々炬燵の中に突っ込んで温めながら過ごす。

宿泊客はおれの他に3人連れが一組。おかげで個室を貸切である。

部屋にはテレビもなく話相手もおらず携帯の電波も届かない。普段当たり前と思っている他者との繋がりから切り離されて、山奥の建物の部屋でおれは一人で炬燵に潜り込んで冷えた体を温めている。。

 

隣に泊まっている3人連れの話し声が時々聞こえてくるが、薄暗く静まり返った部屋に響く不明瞭な人の声は、もの寂しい空気をより一層際立たせるだけだった。

平日でこの天気だからそんなものなのだろう。小屋のスタッフも今日は一人しかいないようで、200人を収容する建物の全体が、人の住む世界とは隔絶された場所で、不穏な天候のもと閑散とした空気に包まれているようだ。

だが、それが嫌かといえば決してそうではない。

 

人というのは人間同士の繋がりの中で作られ生きるものであるが、それでいながらあらゆる繋がりとは別に一人で存在する自分がいる。その宿命とも言える孤独に触れるとき、おれはそこはかとない自由を感じるのである。

孤独と背中合わせの自由。

それは寂しくもあり同時に心地よいものである。

そんなものに触れたくてわざわざこんな山奥までおれは歩いてきたのかもしれない。

そんな気分を堪能しつつうとうとしていると、晩飯の支度ができたとお呼びが掛かった。

 

 f:id:yoshixim:20170301202435j:plain

晩御飯のおかずは比較的小ぶりなハンバーグ。それでも暖かいご飯と味噌汁にありつけるのはありがたい。

ご飯を一膳お代わりし、ビールを一本いただく。

隣の部屋の御一行と同じテーブルを囲み、スタッフのお兄さんも加わってしばし談笑。父親と娘二人といった感じだろうか、50代半ばと思しき男性と20歳前後の女性が2名。関西方面から来られたようで甲武信、雲取、両神と近在の百名山を回っていくそうだ。今日は奥多摩方面から登り明日は三峰に降りるとのことだった。

 

スタッフのお兄さんはどことなく松田龍平に似た感じの若者と記憶しているのだが、実際の記憶が薄れるなかでそんなことを思っているうちにおれの中では完全に松田龍平になってしまっている。なので今思い出すと松田龍平の顔しか思い浮かばないのだが、それほどイケメンだった印象は無く(松田龍平もイケメンって感じではないか…)どちらかというとあまりパッとしないというか、朴訥とした山男の印象が残っているのだが。。

そのお兄さんに明日の予定を聞かれたので石尾根を下って奥多摩駅まで歩くつもりだと告げると「23kmありますからね、結構キツイっすよ」という言葉が返ってきた。そう言った彼の表情が、心配しているのか応援しているのか挑発しているのか小馬鹿にしているのかわからないような、不可解な印象となっておれの中に残っている。

 

まあ、おれの雲取山荘の夜の記憶はそんな感じである。

翌日の弁当を頼み、ビールが空になったところで一足先に食堂を後にした。

 

つづく

 

にほんブログ村 アウトドアブログ 登山へ