おれの山、おれの道

生半可なおっさんが主観的に山登りと人生を語るブログ

短編ブラック童話「アリであると同時にキリギリスでもある昆虫」

おれのやってるバンドM.J.BAHNの曲で「アリとキリギリス」っていうのがあって、この曲のモチーフはかのグリム童話の同名の童話からいただいているんだけど、実はこの曲と童話をつなぐ隠されたブラック童話が存在していたのだった!!

って、なんのこっちゃいってな感じの誰にとってもどうでもいい話なんだけど、昔書いた短編童話みたいなのが出てきたのでちょっと晒してみる。

2001年1月頃の作となっているのでちょうどおれが30歳の時か。。

まったく大人になりきれてない男(今もか)のしょうもない戯言だけど、これはこれでなかなか笑える話だと思うのでよかったら暇つぶしにでもどうぞ。

では以下に。

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アリであると同時にキリギリスでもある昆虫

 

おれはアリであると同時にキリギリスでもある昆虫だ。

周りの奴らはほとんど、バッタかゴキブリだ。

性根のすわった奴は、たいていがカブトムシだったりするが、奴らは自分の餌場を確保する以上のことにその角を使うわけでもない。

ただしカマキリと女郎グモには要注意だ。

さすがのおれも、やつらにはかなわない。

仲良くしようと近づいてったって、しょせん食われるのが落ちに決まっている。

まあその辺を心得ておけば、この郊外の原っぱも悪くない場所だ。

なにしろおれはアリでありキリギリスでもある昆虫なのだ。

 

原っぱが最高に盛り上がるのは夏だ。

夜は至る所、クラブやらライブハウスやらキャバクラやらウッドストックやらで大騒ぎだ。

なんってったって一度きりの夏。

昆虫たるもの、この夏に短い命を燃やさないでどうする?

そしてキリギリスこそが、夏の夜の主人公だ。

だがおれは、やつらとはちょっと違う。

見た目はほとんど男前のキリギリスだが、おれにはアリの血も流れている。

だから白昼の炎天下で働きすぎて、日暮れ時にはくたびれ果てちまう。

そんなわけで、夜はたいがい眠たくてしょうがない。

にもかかわらず、周りの騒がしさときたら!

こりゃあもう、ほとんど公害だぜ。

 

だが、そんなことを思っているうちに、だんだん気分が盛り上がってくる。

夜が更けるにつれて、おれのキリギリスの本能が目覚めるってわけだ。

そうなるともう、止まらない。

なにしろ自分の体の10倍の重さのものでも軽々持ち上げるアリの血が流れているおれ様だ。半端なキリギリスバンドのステージにギター一本抱えて単身で殴り込むぐらい朝飯前だ。

まったくもって、それが生ギターから発せられているとは想像もつかないラウド・サウンド

奴らのマーシャル・アンプなんか目じゃない。

客はおれに釘付け、隣の店のキャバクラ嬢までのぞきに来る始末だ。

まさにスーパースター。

それがおれの代名詞だ。

 

そんなわけで、ステージから降りるおれにメスどもが殺到する。

そりゃあもうなにせ、一度きりの夏。

メスにしてみりゃめくるめくアバンチュールはタフなスーパスターと燃え上がりたいに決まっている。なぜなら最高の子種を宿すことがメスどもにあたえられた使命であり、それを果たすことが至上の喜びにならないわけがないからだ。

腹の中で育ってゆく卵。

それがメスどもに与えるエクスタシーを想像してみな。

自分の腹の中に未来がある。

素晴らしい話じゃねえか。

ほんとにそのことに関してポジティブになれるメスこそが、たぶん短い夏を最高! に過ごせる昆虫なんじゃねえかってのが、おれの意見だ。

それがわかっているこのおれが、メスどものカリスマにならないわけがない。

 

だが、アリでありキリギリスであるおれには、ちょっとした問題があった。おれの生殖器とマッチするメスってのがなかなかいない。

キリギリスには小さすぎるし、アリにはでかすぎる。

まあ、蝉なんかどうかとも思わないでもない。

8年も光のない世界で想像力を掻き立てながら、たった1週間に全てを託して歌う蝉ってのも最高にロマンチックだ。

強いて言うならおれがこのおれ以外に畏怖するのは、蝉ぐらいのもんだ。

おれのギターと張り合うサキソフォン

だが、蝉のうちで鳴くのはオスだけってのは致命的だ。

鳴かない蝉には俺は何も感じない。ただの羽が生えた芋虫に過ぎない。

要するに蝉のメスは趣味じゃないんだから、しょうがねえさ。

それに、おれはホモじゃねえからな。

 

まあ、セックスだけが人生じゃない。おれはアーティストであり、スーパースターだ。

昆虫たちに夢を与える、それが使命なんだから、俗な快楽など糞くらえだ!

まあ、おれに群がったメスたちも、身を引き裂かれるような切なさってものを知っただろう。

全てのメスどもに最高の快楽をあたえてやれなかったってのが、ちょっとだけおれの感傷を誘うのは、もうどうしようもねえことだ。

要するに十字架背負ってるわけさ。このおれは。

 

そんな感じて最高の盛り上がりのなかにほろ苦さをはらみつつ夜は更けていく。明け方までメスどもと大騒ぎをしたあげく、まあおれも酔っぱらってるからなんだかよくわからないうちに眠ってたみたいなそんな毎日。

それでも夜明けと共に目覚め、炎天下で働くなんて、おまえに真似できるか?

まあ、どっちかってえと、おれにとって大事なことは人知れず荷物を運び続けることだった。

スーパースターは余興に過ぎなかったのさ。

 

そんな感じでおれは夏を過ごしたような気がしているんだが‥‥

アルコールのせいかもしれないが、記憶がまるで霧の中で乱反射する朝陽みたいに、おれの手に余っている。

なにせ昆虫だから、脳味噌が小せえんだ。

実際覚えてられることといえば、せいぜいが3分前のことぐらいなもんで、将来設計なんてろくに考えられるわけがない。

だから今こうやって考えていることも、実際のところどうだったかなんて、わかりゃしねえのさ。

まあ、やることはやったはずだから、憂いなどこのおれにあるはずがない。

 

だが、なぜだ?

いまおれの上に降り積もるこの冷たく白いものは何だ?

なんでこんなに寒いんだ?

視界がぼやけ、触覚の震えが止まらないくせに、中足ひとつ動かせない。

 

まあ、しょうがねえさ。きっと今見えるものがおれにとっての受け入れるべき現実のすべてなんだろう。

つまりおれはアリであると同時にキリギリスでもある昆虫だ。

要するに夏はせっせと働いたのに、冬は凍え死ぬ運命にある昆虫なわけさ。

 

fin

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ちなみにM.J.BAHNの曲はこれとは真逆のポジティブな歌になっている。かな?


M.J.BAHN アリとキリギリス

 

そんなわけでこの「アリとキリギス」は収録されていないM.J.BAHNのミニアルバムもよろしく!

明日に向かって

明日に向かって

 

 

そういえばこの前NHKFMの埼玉ローカル番組に出演したぜ!

www.nhk.or.jp

 

さらにライブ情報などはオフィシャルサイトで!

mj-bahn.jp